へたうまに乗る

自分で描いたへたなイラストを挿絵に日々の出来事を切り取って紹介します。

公園で焼きそばの湯切りをした君に届け

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私は公園が好きだ。

特に昼下がりの、ゆっくりと時間が過ぎる公園が大好きだ。

子供達が元気にはしゃぎ、カップルがベンチに腰掛けてはにかみ合い、野鳥のさえずりが心を穏やかにしてくれる。

 

そのような空間で弁当を食べていると、仕事を忘れ、安らかな気持ちになれる。

たとえ子供達が「ギャーギャーギャーギャー」と悲鳴のように叫んでいても、平日の昼間から公共の場にも関わらずカップルがイチャイチャしているのを見せつけられても、鳩が一心不乱に「エサエサエサ」とこちらに忍び寄ってきても、公園の暖かな空気が心に調和をもたらしてくれる。

だが、そんな公園でも忌むべき行為がある。

それは焼きそばの湯切りだ。

公園で焼きそばの湯切りをしたことがあるだろうか?

大抵の人は「あるわけないだろ」と答えるだろう。

ここで「月に1回行う程度」と答える人がいれば、行動を省みた方がいいかもしれない。

もちろん私もしたことはないが、先日公園で焼きそばの湯切りに巻き込まれたのでその話を紹介したい。


暖かな日だったので私は職場近くの公園で弁当を食べることにした。

ビジネス街にしては少し広めの公園で、
サラリーマンや近くの専門学校生がよく弁当を広げる場所でもある。

到着後ベンチに腰掛け、弁当を広げているとすぐ後ろから
「じょぼじょぼじょぼ〜」とおよそビジネス街に似つかわしくない音が聞こえてきた。

(まさか立ち●ョン!? 公園で!? どんなやつだ!?)
と恐怖とある種の期待を胸におそるおそる振り返ってみると…

焼きそばの湯切りをしていた、花壇のそばで。

(なーんだ、焼きそばの湯切りか…え?焼きそばの湯切り?公園で?蛇口のそばでもないのに?)
と一瞬安心しかけながらも異常さに目を疑った。

おそらく近くの専門学生であろう一人の青年は「ノープロブレム」といった済ました顔で湯切りを行っていた。

(せめて水道近くの排水場所で湯切れよ…)と思っていると、目の前を黒い影が「バサバサッ」と通り過ぎた。

鳩である。

公園ではありがちな光景だが、人がパンやごはんなどを鳩にやるとあっという間に集団がやってきて我先についばみ始める。

よもや焼きそばの湯に集まってくるとは思わなかったが、「続けぇぇぇ!!!!!」という鳩の習性を合図に瞬く間に鳩が私の真後ろに集まってきた。

その数50以上。いや、ほんと。

しかし彼らが目的とするエサはどこにもない。

なぜなら彼らがエサと認識している匂いはお湯だから既に地面に吸収されてしまっているのだ。

にも関わらず鳩たちは「エサエサエサ!エサノニオイガスル!!」と言わんばかりにお湯がかかった小枝や小石を口にしては「チガウコレジャナイ」とすぐに放し、また「エサエサエサ!」と地面をついばみ続ける。

それを見た他の鳩も「エサエサエサ!」と地面をついばみ、また他の場所から鳩が飛んで集まってくる。

しかし彼らの欲望が満たされることはない。

だって元はお湯だもの。そこにはあるのは焼きそば味の枝と石だもの。

咥えては離し、咥えては離し、まだ餌が残っていると勘違いした鳩がバサバサとやってくる。

餌はまだある思い込んでいる鳩はそこから立ち去ることもなく増える一方だ。

辺りは鳩の羽が巻き起こす風によって砂がふきあれ、阿鼻叫喚となった世界の中心で私は弁当の蓋を閉じ、避難することに決めた。


しかし人間が立ち上がったものだから鳩は驚き、一斉に飛び立って砂嵐を巻き起こし、去っていく。

穏やかな昼下がりの公園の柔らかな空間はたった一人の行動によって破壊された。焼きそばの湯切りによって。

湯切り、ダメ絶対。