へたうまに乗る

自分で描いたへたなイラストを挿絵に日々の出来事を切り取って紹介します。

思い込みは まじ重い

f:id:maramara21:20181127202444p:plain

私が生まれ育った場所は四国の片田舎だ。
家の前には山がそびえ立ち、家の後ろには田んぼが地平線まで広がっている。
乗用車よりも農作業車の台数の方が多い地域だ。

線路は単線で1時間に一回程度、「ワンマン」と表記した一両の電車が申し訳なさそうにスゥッと通っていく。
どうでもいい話だが都会に出てきて一番驚いたのは電車の本数の多さだ。

 

高校3年の夏休み。オープンキャンパスに参加するため単身大阪に出てきた。
しかし道に迷ったせいもあって、自分が乗る予定であった電車がちょうど目の前で出発してしまった。
田舎者でしかもチェリーボーイであった私はパニックに陥った。
(次の電車に乗って間に合うか!? そもそも次の電車はいつ来るんだ!?)
焦りに焦った私はホームにいた駅員さんに「すみません! 次の電車はいつ来ますか!?」と質問したところ、
「すぐ来ますよ。」と一蹴。
五分後には次の電車がホームに到着し、田舎者の私は心底驚いた。


そんな田舎で育ったからか、都会の喧騒で暮らしていると、ふと自然の中に身を置きたくなる衝動に駆られることがある。

この日はちょうど「自然欲作」の症状が現れた日だった。

「明日、山の頂上で温かいコーヒーを飲もう」。

珈琲専門店で購入した新鮮な珈琲豆を脇に抱え、頂上でミルをゴリゴリしよう。
プリムスのウルトラバーナーでお湯を沸かそう。
熱々に湧いたお湯で挽きたてのコーヒーを淹れ、遠くの景色を見ながら「世の中捨てたもんじゃないな…」という表情をしよう、と。

としたいのはやまやまだが(山だけに)
まずバーナーを持っていないので火を起こせない。
ミルも持っていないので珈琲豆は砕けない。
なんなら珈琲豆なんて買ってないから持っていくこともできない。

仕方ないのでネスカフェのGOLD BLEND(インスタントコーヒー)を自宅で作り、魔法瓶に入れて持っていくことにした。

そうと決まれば気は逸るもので、初心者コースにも関わらず遭難に備えて防寒着と軽食をリュックに詰め、大容量モバイルバッテリーと替えの下着も持っていくことにした。


翌朝、山の麓の駅。

駅前のコンビニでおにぎりと2Lの水を購入し、いざアタック!!

歩き始めて10分。
川の向こうにイノシシを見つけ、「今日はいい日になりそうだなぁ!」と無駄にテンションが上がる。

歩き始めて30分。
しばらく運動していなかったこともあり、少し疲労を感じるが気にするレベルではない。

歩き始めて1時間。
激しく体力を消耗、一旦休憩。コンビニで買った水をがぶがぶ飲む。

歩き始めて2時間。
リュックが漬物石のように重く感じられる。魔法瓶入りのコーヒーのせいだが頂上で飲むために我慢。

歩き始めて3時間。
「なぜおれはこんなところに来たんだ???」
「おめーが自然に触れたいと言ったんだろうが!」
「近所の川じゃだめなんですか?」
「コンクリートで加工されてるから情緒がない」
「野鳥見えないね」
「いつも行ってる公園の方が野鳥の姿(鳩)多いじゃん」
「ていうか足痛い」
「次から近場の公園でよくね?」
「同意」
と脳内で自問自答と責任の擦り付け合いが始まる。


歩き始めて3時間30分。
「頂上まであと200M」の看板が現れる。休憩。

「もうここでコーヒー飲んでいいんじゃない?」
「ちょっと男子ぃ! ここまで来たんだから楽しみは最後まで取っておきなよぉ!」
「いいじゃん、ここも景色きれいだし」
「そうそう、少しでもリュック軽くしようぜ!」
「もうっ! 先生に叱られても知らないからねっ!!」
脳内委員会(参加者は全員男子)の結果、頂上ではないがここまで楽しみにとっておいたコーヒータイムを満喫することに決定。

早速リュックを漁るが中身がごちゃごちゃしており、なかなか魔法瓶に手が届かない。

おにぎりを取り出し、水を取り出し、防寒着を取り出し、カロリーメイトを取り出し、大容量モバイルバッテリー(10400mAh)を取り出し、下着を取り出し、とうとう取り出す物がなくなったところで確証を得た。

 

コーヒーがない。

道中に落とすわけがないので、どうやら準備をしたものの、リュックに入れ忘れていたようだ。

「何しにここまで来たんだ…」と嘆いても仕方がないので、とりあえず頂上を目指すことにした。

先ほどまでダンベルのように重かったリュックだが、魔法瓶が入っていないと脳が認識した途端、急に軽く感じた。
これが噂のファントム・ヘヴィー…今作った言葉だけど。


頂上に到着し、目の前に現れた水平線まで見渡せる景色は、子供の頃に父親と登った山から見た眺めとよく似ていた。


P.S.
帰宅後、テーブルの上には登山を「今か今か」と待ちわびている魔法瓶が立っていた。中身は熱かった。

ビジネスメールを略す行為に憤慨している

f:id:maramara21:20181122221641p:plain

略語というものがある。
「略しても意味は通じるんだから省略しちゃおうぜ」という怠惰な意思のもと作られた言葉たちだ。
スマートフォン』を『スマホ』、『高等学校』を『高校』、『ハリーポッター』を『ハリポタ』など、主に名詞を略しているのが一般的な略語といえるだろう。

続きを読む

うちの奥さん半端ないって!

f:id:maramara21:20181120223603p:plain

「奥さん半端ないってもぉー!」
《アイツ半端ないってほんとに》

「アイツ半端ないって!」
《意味わからんかったな》
「後ろ向きでベッドでめっちゃ寝るもん…
 そんなんできひんやん普通、そんなんできる?言うといてや、結婚する前に…」 

続きを読む

これからの「天気」の話をしよう

f:id:maramara21:20181119185019p:plain

時は平成最後の年、2018年も終わりが見え始めた11月。
人々は平成30年をこう振り返るだろう。「とんでもない年だった」と。
そんな激動の年、男は思い立った。「髪を切ろう」と。

続きを読む

ブラジリアンワックスとバンジージャンプは精神的によく似ている

ブラジリアンワックスをご存知だろうか。

簡単に言うと固形のワックスを電子レンジで温めてドロドロにした後、脱毛したい部分に塗りたくり、冷えて固まったワックスをはがすことで体毛を抜くことができる美容アイテムだ。

続きを読む

「君の膵臓を食べたい」をこれから観ようと思っている人は絶対に見てはいけない

f:id:maramara21:20181113220306p:plain

※ネタバレ注意

 「君の膵臓を食べたい」という作品をご存知だろうか。
もともとは小説で、その後実写映画化、アニメ映画化された作品である。

続きを読む